「遺言書」と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。
「財産が多い家が書くもの」「なんだか縁起が悪い」 そんな風に思われている方も少なくありません。
しかし、多くの相続手続きをお手伝いしてきた税理士として、声を大にしてお伝えしたいことがあります。
遺言書とは、単に財産の分け方を指定するだけの事務的な書類ではありません。
「残された家族が、これからも仲良く笑顔で暮らすための、人生最後の手紙」なのです。
今回は、家族間のトラブルを未然に防ぎ、あなたの本当の「想い」を届けるための重要なテクニックである「付言事項(ふげんじこう)」について、具体的な文例を交えてわかりやすく解説します。

なぜ「正しい遺言書」なのに揉めてしまうのか?
法律のルールに則って、一言の隙もなく完璧に書かれた遺言書。 一見、何の問題もないように思えますが、実はここに「揉める原因」が隠されていることがあります。
例えば、このような内容の遺言書があったとします。
- 「長男に、自宅の土地と建物を相続させる」
- 「長女に、預貯金のうち1,000万円を相続させる」
これを見た長女はどう思うでしょうか。 「どうしてお兄ちゃんばかり優遇されるの?」「お父さん(お母さん)は、私のことが嫌いだったのかな……」と、不満や寂しさを抱いてしまうかもしれません。
足りないのは、財産の額ではありません。「なぜ、その分け方にしたのか」という理由、つまりあなたの「想い」です。
人間は、理由がわからない機械的な決定には反発したくなるものです。特に相続という感情が揺れ動きやすい場面では、この「理由がわからないこと」が、きょうだい間の深い溝を生むきっかけになってしまいます。
家族の心を動かす「付言事項(ふげんじこう)」とは?
遺言書の末尾に、自分の言葉でメッセージを書き添えられる自由なスペースがあります。これを「付言事項」と呼びます。
付言事項には、法的拘束力はありません。ここに「長男は長女に優しくすること」と書いたからといって、法律でそれを強制することはできません。
しかし、付言事項には法律以上の力があります。それは、「残された家族の感情を動かし、納得してもらう力」です。
先ほどの事例に、次のような付言事項が添えられていたらどうでしょうか。
【付言事項の文例】 「長男は、私が病気になってから今日まで、同居して本当に親身に介護をしてくれました。この家は先祖代々の土地でもあり、長男に今後も守っていってほしいため、実家を相続させます。 長女は、遠方に嫁いでからも毎週末のように電話をくれ、私の心の支えになってくれました。本当にありがとう。長女には感謝の気持ちとして現金を遺します。 2人とも、私のもとに生まれてきてくれてありがとう。私が亡くなった後も、お互いに助け合って、仲の良いきょうだいでいてくれることが、私の何よりの願いです」
いかがでしょうか。 これを見た長女は、「お父さん(お母さん)は、私のこともちゃんと見てくれて、感謝してくれていたんだ。お兄ちゃんが家を継ぐのも納得できる」と、すんなり受け入れられるケースが非常に多いのです。
親身に伝わる付言事項を書く「3つのステップ」
付言事項に書く内容は自由ですが、より家族の心に響き、円満な相続に導くためのポイントは3つあります。
① 感謝の気持ちをストレートに伝える
普段は照れくさくて言えない「ありがとう」の言葉を、一人ひとりに宛てて書いてみましょう。これだけで、遺言書を受け取った家族の心が温まります。
② 「なぜその分け方にしたのか」の理由を説明する
「長男は家を継ぐから」「長女には結婚時にお祝いを多く渡したから」など、背景にある事情を包み隠さず説明することで、不公平感を解消できます。
③ 自分の亡き後の「家族の未来」を願う言葉で締める
「みんなで集まって、仲良く食事でもしてほしい」「お母さん(配偶者)をみんなで支えてあげてほしい」など、あなたの最後の願いを伝えることで、家族がバラバラになるのを防ぐ強い抑止力になります。
まとめ:あなたの「温かい想い」を「確実なカタチ」にするために
遺言書は、特別な資産家だけのものではありません。「うちは普通の家庭だから大丈夫」と思っている方にこそ、残される家族への思いやりとして準備していただきたいツールです。
ただし、どれだけ素敵な想い(付言事項)を書いても、遺言書自体に不備や財産漏れがあると遺言書の効力を十分に果たせなくなってしまいます。
当事務所では、お客様が家族に伝えたい「温かい想い」を丁寧にヒアリングし、それが法律的にも税務的にも「確実なカタチ」になるよう、スピーディーかつ親身にサポートを行っております。
「何から書き始めればいいかわからない」「自分の家族の場合はどう書くべき?」と迷われた方は、まずは一度、お気軽にご相談ください。あなたの家族の未来を守る一歩を、一緒に踏み出しましょう。
山嵜美樹税理士事務所では、遺言書作成のご相談を親身にお受けしています。
